国の政策を補完する形で新たな雇用を生む (三浦和夫のNewsWatching Vol.175)

 最近の話。
 出会う人材派遣・請負会社の幹部の人たちの言葉。「そうですねえ、業績は一進一退ですね。可もなく不可もなくというところでしょうか」と話します。表情はおとなしい。10年前のような生き生きとしたところは見受けられません。

 理由はいくつもあります。
 (1)景気はなんとなく低迷したままだ。
 (2)法令改正案は塩漬けのままで、派遣のイメージは十分に回復していない。
 (3)専門26業務の適正化プランで余計なエネルギーを消耗して、派遣先の派遣離れを促してしまった。
 (4)東日本大震災の後遺症も残る。
 (5)受注は少し増えたが、配置するための十分なスタッフがいない。

 ネガティブな声を聞くたびに、もっと従来のビジネス発想から抜け出して、例えば、国の政策を補完する立場から派遣サービスの社会貢献的価値を高めて良いのではないか、と思っています。

 今の民主党政権の基本的な考え方は、所得格差の是正を図り、そのための社会的コストを国が補てんするというものですね。私は考え方のすべてを否定しませんが、その反面、高額所得者がもっと頑張って働いてくれる環境づくりについて、国は真剣に考えるべきではないのか、と思っています。

 例を上げると、共働きで年収2,000万円以上という夫婦は少なくありません。あるいは、独身で年収2,000万円以上の人もいるのですね。弁護士とか医師、会社経営者、外資系企業の役員、国会議員もそうですが、そういう人たちが仕事と家事を両立させるのは困難です。

 私の知り合いで、外資系金融会社に勤務して年収3,000万円以上の独身女性(39歳)がいました。その後の結婚・出産で、育児と家事のために仕事から離れてしまいました。“能力がありながらもったいないな”と思います。
 あるいは、夫婦の年俸を維持するために、家事と育児を義母または実母に依存しているケースもあります。“家事や育児を考えると子供を産めない”と悩む夫婦もいるかもしれません。
 高額所得者が頑張って働き続けられる社会をどうやって作り上げることも国の責務です。

 家事や育児の支援は、人材派遣会社が派遣又は請負の形式で事業化して良いはずです。雑ぱくな試算ですが、単純な家事サービス(育児を除く)の標準モデルは、1日5時間、週に4日間、時間当たりのサービス料金を1,800円としてみます。世帯の支払う月額料金は14万4千円、年間支払額は172万8千円となります。家事スタッフの賃金は少なくとも月額10万円以上となるはずです。もっと働きたいスタッフは2世帯を兼務すればよい。

 しかし、年間173万円の支払いはやはり痛いですね。そのため、支払総額を年度末に確定申告して一定の割合で控除してもらえる国の支援策が必要となります。高額所得者が頑張って働き続ければ税収は安定的に確保されるのです。家事・育児スタッフという新たな雇用も生まれるのですから、国としても一考の価値があるはずです。

 このように、考える次元を高くして派遣事業の有用性をアッピールして良いのではないか。そうすれば、人材ビジネスの現場に再び活気が戻ることになるでしょう。
 業界団体もそうですが、ひょっとして、日本人材総研の事業課題かもしれませんが。

(完)

11月24日(木) 石川県 派遣元責任者講習会 開催!!

日 時 2011年11月24日(木) 午前10時 開始 午後5時 終了(予定)

場 所 (財)石川県地場産業振興センター 研修室(本館) 金沢市鞍月2-1 TEL:076-268-2010

定 員 100名(まだまだ席に余裕があります。)

お申込み トップページ右上バナー「講習会」 又は こちらをクリック

受講料 一般 9,000円  組合員 7,000円(※)

※派遣@協同組合へご入会されている場合、組合員価格となります。

申込み締切 11月22日(火)

陰りが見えてきたか?中国経済。(三浦和夫のNewsWatching Vol.177)

記事のイントロは次のように述べています。
「中国のユダヤ人と称せられる温州商人が、借金と高利ローンの返済ができないことから、最近頻繁に『夜逃げ』が発生する。温州商人は全国で多くの投資をしており、これによって中国の多くの都市で建設プロジェクトの中断を引き起こし、金融市場は大きな衝撃を受けている。急成長した中国経済に破綻が見え始めた」――。

記事全体を要約すると次のようです。
「失踪したある企業家の負債総額は約20億元(約250億円)に達し、温州市以外、例えば、内モンゴル自治区のオルドス市でも同様の問題が発生。
温州の民間ローンは、通常友人や親類、同僚などを通じて行われるが、今年の最高年利が50%にも達した。

数年前、民間の投資者から借り入れた資金を不動産投資にあて、上海と北京はみな温州人の不動産購入グループの主な投資先だったという。
中国人民銀行温州支店の調査によると、温州市の89%の家庭、59%の企業が民間高利ローンに関係して、全市の高利ローン総額は1兆元(約12兆5000億円)に達するという」――。

米国でもサブプライムローン問題が金融不安を誘発したのはつい最近のこと。その結果、リーマンショックを引き起こして世界経済が混乱しましたが、中国の市場経済が破たんすれば日本経済にとっても大打撃であり、先行きが懸念されます。

実はニューズウイークではすでに6月末、「中国経済崩壊、2つの兆候」と題したコラムを配信し、高利貸しの跋扈、帳簿外の取引などに言及しています。不動産価格の下落が即、不良債権の山を抱えることになるというのです。
不況に転じて失業者があふれることが中国政府にとって一番厄介な問題であり、温家宝首相も頭が痛いところです。

最近、私の知り合いである中国人たちが日本企業などに対して中国投資を呼びかける動きが盛んになり、その逆の現象はぱったりと止んでいます。“潮の流れが変わったな”と察知しましたが、これほど大きな問題を抱えているとは思いませんでした。

でも、一度は市場原理の影響を体験することで、中国経済がより良い方向で生まれ変わる可能性もあります。政治体制も大きく変化するかもしれません。

(完)

人材ビジネス研修会ご参加ありがとうございました

平成23年9月28日(水) 人材ビジネス研修会。

ご参加ありがとうございました。

↓↓↓ 当日の様子 ↓↓↓

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

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【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

【人材ビジネス研修会】当日写真

派遣法生みの親、高梨昌教授を偲ぶ。(三浦和夫のNewsWatching Vol.173)

2011年9月13日

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笑顔で語る、高梨昌信州大学名誉教授(2009年2月月刊誌取材で撮影)

 信州大学の高梨昌名誉教授が8月30日、胃がんのため急逝しました。83歳。
 葬儀は近親者ですでに済ませ、近いうちに、生前親交のあった人たちとの「お別れ会」が開かれるそうです。

paper_20110913-03 労働者派遣法の施行から25年が経ち、高梨教授の名前を知らない業界関係者が最近増えているようですが、この先生がいなかったら労働者派遣法の施行はまだ先になっていたかもしれません。当時違法状態であった派遣労働の実態調査を繰り返し行い、新法の原案策定と成立に力を注いだ功労者でした。

 

 新法施行(86年7月1日)を前に、私は月刊人材派遣(月刊人材ビジネスの前身)を創刊させようと、86年1月以来旧労働省に毎日のように足を運び、所管室長や室長補佐、係長と話し合いをしていましたが、4月中旬頃、職業安定局民間需給調整事業室の坂根俊孝室長(故人)席で初めて高梨先生にお会いしました。当時57歳でした。

 先生は38歳の私に向かって、「派遣の専門誌を作るんだって?そんなに情報があるかなあ。(編集で)行き詰まるかもしれんよ」と笑顔で話しました。高梨先生は当時、中央職業安定審議会派遣問題等小委員会の座長をしていました。
 それ以来、高梨先生とは何度もお会いして派遣法の基本を教えてもらい、同年7月1日発行の創刊号には特別に執筆して頂きました。

 高梨先生は東京の出身。実父は新聞記者だったそうです。そのせいか、ジャーナリスティックな能力を持ち、原稿の書き方も上手だし、インタビューの応答をテープに吹き込んで文字原稿に起こす場合も修正する必要がないほどで、先生の能力の高さに舌を巻きました。
 私は、その後もテーマを見つけては10数回にわたってインタビューを続けましたが、テープ起こしを通じてずいぶん勉強することが出来たのです。

 
paper_20110913-02 10年後の97年7月、先生から声がかかり、高梨昌信州大学教授と渡辺裕信州大学教授、諏訪康雄法政大学教授、三浦和夫による共著、「人材派遣の活用法」(東洋経済新報社)を出版することができたのです。
 その執筆陣に参加したことで私の名前が知られるようになり、東洋経済新報社に加えて、日経新聞社、日本法令出版社、日本実業出版社などからも声がかかり、これまで8冊の書籍を出せるようになりました。

 また、04年秋、私は早稲田大学理工学部の教授たちと協議して、「早稲田大学ヒューマンリソーセス研究所」を立ち上げたことがありました。プロジェクト研究の第1弾として「早稲田企業人事塾」を開校させましたが、この時、高梨先生に塾長をお願いして、先生と一緒に講義プログラムの立案と関係講師の選定と依頼などを行ったものでした。塾は3カ月コースでしたが、有力企業の人事マンたちに人材派遣会社の人事担当者も合流受講して、にぎわいました。

 06年8月4日、東京の京王プラザホテルで月刊誌創刊20周年記念パーティを開きました。この時も横浜の自宅からわざわざ来場され、祝辞を述べられました。
 先生は終始、労働者派遣事業の適正な発展を切望されていました。理想主義ではなくて現実主義者だったのではないか、というのが私の印象です。

 晩年の数年間は、奥さまの介護をするなどご心労もあったのではないか、と推察します。
 先生には25年にわたり大変お世話になりました。深く感謝しております。合掌。

(完)

白書に見る非正規労働者の増大と今後(三浦和夫のNewsWatching Vol.165)

2011712

 2011年度版労働経済白書がこのほど公表され、新聞各紙が報道しています。
 8日付朝日新聞夕刊によると、「バブル崩壊後に就職活動した世代のうち、1970年代後半生まれの『ポスト団塊ジュニア世代』が非正規社員のままでいる割合が高い。前後の世代より正社員への転換が緩やかで、安定した仕事を得づらくなっている」(松浦祐子記者)と書いています。

 私はこの記事を読んで、確かに、正社員化に関して世代間に狭間は生じていますが、日本経済の長期的な不安定を考慮に入れると、企業側の正規社員採用指向は今なお慎重です。結果として、非正規化率は増えることはあっても減少に転ずるのは難しいのではないか、と思っています。むしろ、それをある程度流れとして認めたうえで、効果的な雇用対策を講じるほうが適正ではないのか、と感じています。

 当該朝日記事は、世代ごとに、働き始めてから年をとるにつれて、非正規社員の比率がどう推移しているかを男性で調べています。
 それによると、「『ポスト』世代は、社会に出る時期が90年代後半の就職氷河期と重なり、20~24歳時の非正規社員比率は16.9%と高かった。その後も不況や企業の新卒志向の根強さで、30~34歳(09年時点)になっても13.3%とあまり下がっていない」、さらに、

 「70年代前半生まれの『団塊ジュニア世代』は入社時の90年代前半の雇用環境は厳しかったが、非正規社員比率は20~24歳時点で9.3%。35~39歳(09年)には7.5%に改善した。80年代前半生まれは、20~24歳時点の非正規社員比率は26.6%と高かったが、25~29歳(09年)には半減し、大幅に改善している」――。

 改善したのは、当時の世論や雇用対策がある程度浸透した結果だと推察しますが、時代の趨勢(すうせい)として正社員化が果たして促進するかは疑問が残るところです。

 厚生労働省は6月23日、「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」の第一回会合(座長、樋口美雄・慶大商学部長)を開きました。非正規労働者数が増大する傾向をとらえて、雇用の安定や処遇の改善に向けて横断的な議論を行い、公正な待遇確保に必要な「非正規雇用ビジョン」(仮称)を策定するのが目的だそうです。

 どこまで公正化が図れるか今後の会合の成り行きを注視しなければなりませんが、非正規労働者の増大を念頭に置いた政策研究のほうが意味を持つでしょう。

 労働者派遣法改正案は今の国会の状況を考えると、不透明が続いています。
 「『製造派遣の原則禁止』と『登録型派遣の原則禁止』を取り下げるので、改正案を採決してほしい」と、野党に対して政府側が打診しているとも聞いていますが、「日雇い派遣の原則禁止の撤回はどうした?」と言いたいところです。
 もしも再改正案の作成が必要となれば、非正規労働者の待遇改善に関する規制が何らか加わる可能性はあるでしょう。

(完)

平成23年度 第4回 通常総会

日 時  平成23年5月27日(金) 16:00~

場 所  金沢スカイホテル 18F(研修室) 金沢市武蔵町15-1

< 議案 >

■ 第1号 議案 22年度事業報告・22年度収支決算・損益計算書・賃借対照表・損失処理案および監査報告決定の件

■ 第2号 議案 23年度事業計画・および収支予算決定の件

■ 第3号 議案 借入金残高の最高限度額決定の件

■ 第4号 議案 経費の賦課徴収方法決定の件

■ 第5号 議案 役員報酬決定の件

■ 第6号 議案 役員(監事)補欠の件

以上が議案となります。ぜひご参加くださいませ。

NW定期購読のお願いとご案内

株式会社オピニオン
代表 三浦 和夫
2010年10月吉日

 

謹啓
 すっかり秋めいてまいりましたが、その後お元気でいらっしゃいますか?
 私は、相変わらず元気に頑張っております。

 5-7月に開催した時局講演会では大変お世話になり感謝しております。お陰様というか、その後の政局が一変して、改正労働者派遣法案は継続審議となり、10月1日から始まった臨時国会でどのような取扱いとなるかは不明ですが、薄明かりが見え始めました。
 細川律夫厚生労働大臣は10月1日の記者会見で、「(修正は)今は考えていないが、国会でどう対応するか、与党とも相談して考えていく余地はある」と述べるなど、法案審議の先行きに含みを持たせた発言をしています。
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労政審傍聴レポート(News@ステーション 11/20)

労政審傍聴レポート(第2回)果たして年末結審可能か?
こんにちは、急に寒くなりました。お元気ですか?
((社)日本翻訳協会 派遣法Q&Aジャーナルからの抜粋です。)

厚労省のホームページにはやっと10月7日の第63回労働政策審議会職業安定分科
会議事録が掲載されました。
「派遣法Q&Aジャーナル」では前回同様、SBSスタッフ㈱の小川さんが、引続
き11月13日の労政審職業安定分科会の傍聴レポートを送ってくださいました。
早速ご紹介いたします。
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労政審傍聴レポート(News@ステーション 11/6)

さて、下記は厚生労働省の『労働政策審議会職業安定分科会』の傍聴レポートです。
((社)日本翻訳協会 派遣法Q&Aジャーナルからの抜粋です。)

SBSスタッフ小川さんの【第136回労働政策審議会職業安定分科会】傍聴レポート

小川さんは、SBSスタッフ株式会社の埼玉西支店長として活躍なさっている若手のホープです。
http://www.sbs-staff.co.jp/

小川さんは、実にしっかりしたレポートを書いてくださいました。それだけでなく第3者の目として
共同通信社ニュースを資料につけているのもさすがです。

昨年の政府改正案の目玉は、「日雇い派遣の禁止」でした。
「登録型派遣と製造業務派遣については「そもそも禁止する必要があるのか」という原点まで戻
ってしまったのではないかという気がします。
不況下にあること等を理由に労使双方の意見が全く平行線のまま、長期化する可能性も考えら
れるのではないでしょうか」とういうのが傍聴なさった小川さんの感想です。
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